未開封新品ではございますが、帯裏面一部と帯背に色褪せ、紙ジャケット上部中央に内封ディスクによる傷みが1cm程ございます。
日本独自リマスターでございますが、日本側所有のマスターテープを基としたものがミソ。
(日本特有の高音中心で幾分杓子定規的な感覚ではございますが)オリジナルに即した立体感と躍動感の強いものとなっており、
非常に良心的な音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは非常に興味深い経歴の名手揃い。
Pat Travers(Vo、G、Key)、故
Peter ”Mars” Cowling(B、ex-Gnidrolog(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)、The Flying Hat Band(かのJudas PriestのGlenn Tipton在籍!))、
Pat Thrall(G、B-Vo、ex-Stomu Yamasita's Go、Automatic Man、
Alphonso Johnson、
後にHughes/Thrall、Asia、Meatloaf等々。
Lincoln Goines/Bill Connors等Jazz/Fusion系のプロデュース)、
Tommy Aldridge(Ds、Per、ex-Black Oak Arkansas、後にGary Moore、Ozzy Osbourne Band、Project:Driver、
Patrick Rondat、
Whitesnake、Manic Eden、House of Lords、
Thin Lizzy、
John Sykes、Motorheadセッション
等)となります。
ゲストにMichael Shrieve(Per、ex-Santana、Stomu Yamashita's Go、Automatic Man他)他の参加がございます。
プロデュースはDennis Mackeyと
Pat Traversとなります。
(前者はAl DiMeola、Brand X、Judas Priest”Stained Class”後にAlcatrazz ”1st”等を手掛ける)
1979年6月~1980年1月米国フロリダ州マイアミ”Quadradial Studios”での制作、
同州ココナッツグローヴ”Bayshore Studios
”でのミックスとなります。
自身のソロ・トリオ編成で活動を行うものの、
活動拠点をアメリカに移す案を巡って難色を示した名手Nicko McBrain(Ds、ex-Stretch、The Streetwalkers、後にTrust、現Iron Maiden)が離脱。
また、トリオ編成の限界を感じたPat Traversはソロバンドを解体。名手Peter’Mars’Cowlingを残留させ、ツインギター編成を試みる事となります。
されど、イギリスでのセッションに限界を感じたPat Traversは本格的にアメリカに拠点を移す事を決意。
米国活動中に邂逅、意気投合したTommy AldridgeのBlack Oak Arkansasとの契約切れを待ち”Pat Travers Band”を結成。
また
ジャズ/フュージョン系セッションで名手として知られ、
Automatic Manを解散させ
た名手Pat Thrallを加入させ、
「バンド」として新作”Heat in the Street”制作に乗り出すという経緯がございます。
チャート的には前作程ではなかった模様でございますが、評判は非常に高いもの。
そもそも評判の高かったライヴは評判を呼び大物ミュージシャンのオープニングに多々起用された模様。
アメリカ進出の土台が築かれた感がございます。
新作及びライヴの非常な好評さ、新バンドの充実振り、そしてトリオ編成時代ではライヴで質が成し得なかった楽曲の再構築を目指して、
大傑作ライヴ盤「Live ! Go for What You Know」が制作。
リリース後は更なる非常な好評を呼び、バンドは順風満帆。
そして満を持して新作制作に乗り出すという経緯がございます..............................................
さて今作。
名手系ギタリス
トでありながらもヴォーカリスト、鍵盤系も使いこなす事がありそもそも音楽的な応用力を持ち合わせているPat Travers。
前作が演奏面で非常な評判を呼んだライヴ盤という事があり、今作は楽曲に重点を置いた感のある落ち着きのある作風となっております。
またリズム的にも頼りになる相棒やリズム隊の存在で演奏の自由が広がり、
またキーボード使用という音楽性の幅を広げる工夫が前スタジオ作以上に成されており、非常に興味深いものとなっております。
演奏面で自由を得ている事があり、
今作の肝である作曲面でPat Travers独特の(かの名手Todd Rundgrenに繋がる洗練された)メロディアス/メロウな感覚を上手く活かす感がございます。
後に名手Tommy Aldridge曰く「優れたリズム・ギタリストではあったが、リードギタリスト面は.......」というPat Traversでございますが、
どちらかと言えば古典派リードギタリストという感。
されど後に名手故Gary Moore(曰く「明らかに影響を受けた」)やGlenn Hughesが絶賛する新世代系名手Pat Thrallの存在が刺激となっている感があり、
楽曲やヴォーカル中心とは言えど、そのツインギター個性を生かす感がございます。
反目し合うのではなくお互いの個性を強調しつつ協調するというかの”Wishbone Ash”をハイテク化した感があるツインリードでございます。
(但し、Pat Thrallのソロの出番をもっと増やしても良かった感がございます.............前述のTommy Aldridgeの発言はこれに絡む感が..........)
但し、共にリズム面が長けた名手という事がミソ。今作ではそこを重視した感もございます。
バンド自体がリズム面にも長けたハイテク系名手揃い。
とりわけPeter’Mars’Cowling/Tommy Aldridgeのリズム隊はソリッドな上に変幻自在。
Tommy Aldridgeの名演のみならず、対等な個性たるPeter’Mars’Cowlingのタイトなリズム感やフレーズの秀悦なセンスにも注目でございます。
今作では派手さ・豪快さは抑えられておりますが細やかさと躍動感そして応用力抜群というもの。
正直HR/HM系の歴史的な名リズム隊の一つという感がございます。
正直、このPat Travers Band~Gary Moore Band時代がTommy Aldridgeの非常に整った高度な演奏が聴かれる時代。
Ozzy Osbourne Band時代以降は(セッション・ワークにおいても)「派手に豪快に叩け!」と演奏に強く求められる感があり、
演奏スタイルが変化致しますので非常に貴重な録音の感がございます。
(名手Tommy Aldridge曰く「才能の全てをつぎ込んだ」とも...............................)
後々にハイテク・ツインリード・ギターが売りであるかの”Night Ranger”が登場致します。
かのJack Blades/Brad Gillisがウェストコースト系名ファンクバンドで知られた”Rubicon”での活動期は
全盛期Pat Travers Bandと重なるもの
。
様々なフェスティバルやツアーでこの”Pat Travers Band”と遭遇している筈。
ハイテク・ツインリード・ギターの有り方だけでなくリズムやドラムの有り方やファンク/ポピュラー系絡みの音楽性等々、
後の”Night Ranger”の音楽的コンセプトに
影響を強く与えた感がございます。
今作は米国で大きな成功を収め、バンド随一のチャートアクションを叩き出す事となります。
されど核となるPat Traversに「ミュージシャン特有の私生活問題」が既に持ち上がってきており、それがバンドの頭に圧し掛かる事となります。
その問題が創作面や演奏面にも悪影響を与える事となり、
Thrall/Aldridgeは
大きな不満を感じる様になります。
やがて短期間でバンドの深刻な亀裂を引き起こし、
あっけなく全盛期が終焉する事となります...................
この機会に是非。
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