01.DOCTOR MY EYES
みずみずしい歌声と爽快なサウンドが心地良く響くデビュー曲。キャッチーなメロディと的確なアレンジも秀逸。ユーモラスで皮肉っぽい歌詞も彼らしい。クロスビー&ナッシュのハーモニーやジェシ・エド・デイヴィスのリード・ギターも光る。
02.THESE DAYS
個人的な経験を描きながらも普遍性を獲得している秀逸な曲。誰もが経験しているはずのポスト思春期のあの感覚がここにはある。心の中から自然にあふれ出したかのような歌声が素晴らしい。盟友デヴィッド・リンドレーのスライド・ギターも光る。
03.FOUNTAIN OF SORROW
愛し続けることの難しさについて歌った秀逸なラブ・ソング。理想の相手を求めて去っていった恋人が戻ってきた喜びと決して幸福だけが待っているわけではない未来への不安が、同居する主人公の心情を見事に表現している。歌も演奏も完成度の高い仕上がり。
04.LATE FOR THE SKY
デヴィッド・リンドレーのリード・ギターをフィーチャーしたラブ・バラード。心が通い合わなくなった男女の空虚な関係をリアルに描いた歌詞はシリアスで、ブラウンの歌声もメロウだが、曲自体は意外にも力強く響く。控えめなピアノとオルガンも効いている。
05.THE PRETENDER
自分を偽って生きる人々のために神に祈りを捧げるバラード。つまり全人類のために祈っているようなものだが、愁いを秘めたブラウンの歌声が勇敢に感じられるから不思議だ。クロスビー&ナッシュのハーモニーが素晴らしい。
06.RUNNING ON EMPTY
1977年夏の全米ツアーでのライヴ録音。自伝的な歌詞の内容は苦いものだが、ブラウンの歌声はポジティヴでバンドの演奏もパワフル。走り続けることの困難を歌いながらも、それでも走り続けるだけさ、という彼の覚悟もここにはある。全米11位のヒットを記録。
07.STAY
1977年夏の全米ツアーでのライヴ録音。モーリス・ウィリアムズ&ザ・ゾディアックスの1960年のヒット曲のカヴァー。『孤独なランナー』では「The Load-Out」とのメドレーで演奏され、ローズマリー・バトラーやデヴィッド・リンドレーのヴォーカルもフィーチャー。
08.CALL IT A LOAN
盟友デヴィッド・リンドレーとの共作曲。この曲を収録したアルバム『ホールド・アウト』発表直後に結婚することになる恋人リン・スウィーニーに捧げられたジェントルなラブ・ソング。「君から受けた愛をローンで返済させてくれ」なんて歌うラブ・ソングは珍しい。
09.SOMEBODY'S BABY
映画『初体験リッジモント・ハイ』(1982年)のサントラに提供したダニー・コーチマーとの共作曲。映画の内容に即して“ナンパ”をテーマにした曲だが、ブラウンには珍しくポジティヴなパワーにあふれた、極めて80年代的なポップ・ソング。
10.TENDER IS THE NIGHT
ダニー・コーチマー&ラス・カンケルとの共作曲。擬似レゲエ調ビートと80年代サウンドに乗せて、ほぼ全肯定的に歌われるラブ・ソング。発表当時にはブラウンらしくないという批判もあったが、彼らしい祈りのニュアンスはここにもある。全米25位のヒットを記録。
11.LAWYERS IN LOVE
いかにも80年代的な米国産ポップ・サウンドをバックに、ブラウンらしい皮肉と冗談を満載したユーモラスな曲。シリアスなメッセージも隠されているが、それよりもまずサウンドそのものとコミカルなニュアンスを大いに楽しみたい。全米13位のヒットを記録。
12I.N THE SHAPE OF A HEART
恋愛の達人ブラウンならではの深い洞察が光るロスト・ラブ・ソング。哲学的と表現してもおかしくはない主題を魅力的なポップ・ソングに仕上げてみせる彼の鮮やかな手際を堪能できる。彼の力強い歌声と過不足のないバンド・サウンドも見事なものだ。
13.LIVES IN THE BALANCE
米国政府の中南米政策を痛烈に批判したメッセージ・ソング。中南米の人々の声を代弁する歌詞にふさわしく、フォルクローレ楽器ケーニャがフィーチャーされている。個人的な歌をずっと書き続けてきたブラウンの“社会派”としての代表作となった。
14.THE BARRICADES OF HEAVEN
スコット・サーストンらバンド・メンバーとの共作曲。1960年代のカリフォルニアを舞台にした自伝的な歌詞、12弦リッケンバッカーとハモンド・オルガンの音色が、オールド・ファンを泣かせる。“天国のバリケード”という比喩も秀逸。
15.THE REBEL JESUS
ゲスト参加もしたチーフタンズのクリスマス・アルバム『The Bells of Dublin』 (91年)への提供曲をセルフ・カヴァー。辛辣な語り口によるブラウン流クリスマス・ソング。体制への反逆者としてのイエスを描いた歌詞が素晴らしい。
16.THE NEXT VOICE YOU HEAR
97年にリリースされたベスト盤に収録された唯一の新曲。ジョン・ハッセルの尺八仕様のトランペットをフィーチャーした、エスニックなサウンドをバックに歌うブラウンのメッセージは「君自身の声を聴け」。サウンドは変化しても、彼のメッセージは不変だ。