2001年度本国リマスターとなります。
音の輪郭が角張る、低音の強調等々幾分現代的な音像の感がございますが、非常に良心的な音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは全盛期名手揃い。
Robbie Robertson(G、Autoharp)、故Levon Helm(Ds、Per、Vo、G)、故Rick Danko(B、Vo、Fiddle、Contrabass)、Garth Hudson(Key、Acoudion、
Horn
)、故Richard Manuel(Key、Vo、Ds)となります。
プロデュースはバンド自身。
1970年5月~6月米国ニューヨーク州ウッドストック”Woodstock Playhouse”での制作となります。
エンジニアがTodd Rundgrenとなります。
但し、ミキシングはTodd RundgrenとかのGlyn Jones(The Rolling Stones、The Who、Led Zeppelin、The Beatles、Eagles、Bob Dylan他)となります。
そもそも非常に長いキャリアを誇るバンド。
1957年後期にLevon Helmが基礎R&R系ミュージシャンRoger Hawkinsのバックバンド”The Hawks”に参加した事から始まります。
紆余曲折を経て1961年末までにRobbie Robertson/Rick Danko/Richard Manuel/Garth Hudsonが揃い活動するも、1963年後半に独立。
バンド名を変えシングル楽曲を制作リリースするも鳴かず飛ばず。
また、かのルーツ系ブルーズ・ミュージシャン”Sonny Boy Williamson”(Eric Clapton期The Yardbirdsとの共演で御馴染み)との邂逅を経るも活動叶わず、Sonny Boy Williamsonは死去の憂き目に遭う事となります。
されどアルバム”Highway 61 Revisited”で”Electric系フォーク”という新分野を指向したかの”Bob Dylan”と1965年に邂逅。
ツアーのバックバンドを務め、
”Bob Dylan & The Band”の名称を得
る事となります。
賛否両論を呼んだツアー後に作品制作に入るものの思う様な成果は得られず、Levon Helmが一時脱退。
Robbie Robertson/Rick Danko参加でBob Dylan新作”Blonde on Blonde”を制作し、ツアーに出、反響を得るものの賛否両論。
その後1966年7月29日にBob Dylanはバイク事故を起こし、活動停止。米国ニューヨーク”Woodstock”で静養する事となります。
その後”The Hawks”として活動するものの再びBob Dylanからの制作参加要請を受け、”Woodstock”に拠点を構える事となります(御存知!かの”Big Pink”)。
その後Levon Helmが復帰。1967年10月までBob Dylanとの制作を続ける最中、マネージャーがレコード会社を接触。契約を締結する事となります。
”かのBob Dylanのバックバンド”という実績から契約。
当時は仮に”Cracker”というバンド名で契約致しますが既に”Bob Dylan & the Band”という名声を博しており、そこから
”The Band”(笑)と名称を変更する事となります..........何かねぇ..............
Bob Dylanとの制作で既に録音機材を本拠地”Big Pink”に持ち込んでいた事があり、1968年初頭に制作。
L.A.の”Capital Studios”で追加録音とミキシングを行い、
1968年7月1日にデビュー作”Music from Big Pink”をリリースする事となります。
当時はロック音楽の多様性という時代。
演奏・創作エゴを全面に出した時代という事があり、The Bandの指向する”想像された米国ルーツ音楽のロック化”は非常に異色のもの。
セールスは思う様に揚げられる事が無く、後にRobbie Robertson自身も1968年にリリースされた不思議な作品と自嘲する有り様。
されど、ミュージシャンを中心に根強い支持が集まる事となります。
(演奏エゴに疲れ、更には執拗な批判に晒された当時”Cream”のかのEric Clapton曰く「The Bandのメンバーになりたかった」とも......)
ツアーも絡み1968年~1969年に掛け、新作を制作。
されどニューヨークでの制作が上手くいかず、L.A.へ移行。”Poolhouse”という住居に機材を持ち込み再び制作に打ち込む事となります。
「前作あっての今作の音楽性」という感があり前作との二枚組と捉えられるもので、
よりベーシックな感のある音楽性。
また(Robbie Robertson以外の)マルチプレーヤー的な感のあるメンバーの特徴を生かした楽曲が目立つもの。
1969年9月22日にようやくリリースすれば
セールス/チャートアクションが大きく前作を上回り、ツアーも大好評。
当時は
公民権運動でのヒスパニック/黒人の台頭そして”Woodstock”それに絡むSantanaの登場等があるもののベトナム戦争からくる厭世感やキング牧師の暗殺等々重なり、
The Beatles解散や時代を象徴したかのJimi Hendrix/Janis Joplin/Jim Morrison等が後に死去そしてJefferson Airplaneのビジネスに絡む醜い騒動。
(かのJames Taylorの名曲”Fire and Rain”のモチーフ
でございますが.......................)
時代を象徴するイベントが終わり、祭りの後の虚無感という時代がやってまいります...............................
またJames TaylorやCarol King等々内省的な歌詞を紡ぐS&SWの登場・台頭という
時代が変化しつつある頃。
The Bandの音楽性に共鳴する聴衆が急激に増えていく事となります.....................................................
アメリカ保守回帰という中で
今度は大反響を呼び、
バンドは順風満帆となります。
されど、この辺りからRobbie RobertsonとLevon Helm等他のメンバーとの作曲クレジット等に絡み確執が始まる事となります。
期待高まる新作制作に乗り出しますが、バンド自身は本拠地”Woodstock”の”Woodstock Playhouse”にてライヴ盤制作を指向するも、
かの”Woodstock”イベントでの大混乱を危惧した地元住民が大反対の憂き目に。
会場使用は同じもののライヴ盤制作は中止。ライヴ形式によるオリジナル作品制作に移行する事となります。
されど、作品制作における会場音響の問題そして以前とは異なる感のある制作エンジニア”Todd Rundgren”の存在。成功によるミュージシャン特有の私生活問題等々が頭を擡げる事となり、
またRobbie Robertsonと故Levon Helmというバンド内の確執が露呈化。
バンドに暗い影を落とす事となります..................
何とか録音を終わらせるもののミキシングを巡り、Robbie RobertsonはTodd Rundgren、Levon Helm他四名はGlyn Jonesを推す事となり、
Todd Rundgrenは一計を案ずる事となり制作テープを以てロンドンに向かい、Glyn Jonesとそれぞれミキシングを行う事となります。
そして二つのミキシングテープを以てTodd Rundgrenは帰米。バンドに選択を楽曲毎にさせるものの、バンドの意向で楽曲によっては再ミキシングを行う事となります。
ややこしい過程を経てようやく完成に漕ぎ着けリリースとなる.....................という面倒な経緯がございます...........................
さて今作。
制作エンジニアがTodd Rundgrenという事がミソ、でございます。
よって前作よりも音響的に洗練度が強いものではございますが、
演奏・アンサンブルや楽曲の纏まり・洗練度も高まったものでございます。
制作の有り方が(そもそもの経緯があり)独特ではございますが以前同様温かみの有る厚みのあるものを指向しているものの、デモ感や生々しさのある以前の
音造りから脱却したもの。
スタジオ作品色や加工色が感じられるものとなっております。
音楽性は以前同様の路線ではあるものの緩さや甘さが感じられるもの。前二作でやり尽くしたという感があり、新展開を模索するという感。
(そもそも中止となったライヴ盤制作企画が創作面のインターバルを置くという感が.............)
Robbie Robertsonの楽曲が殆どを占めておりますが、原曲提供は誰であれメンバー誰もがアイデアを持ち寄り積極貢献したというバンドによる貢献という感がございます。
但し、ライヴ盤制作企画が中止となり、(以前程ではないにせよ)
創作意欲が
旺盛ではあったもののオリジナル楽曲を急遽用意しなければならないという中での作曲の感。
突貫工事とまでは言えないものの、無理矢理ネタを造り出したという感がございます。
原曲提供がRobbie Robertson中心で(他の楽曲提供を認めなかった感も...........)次作以降に露呈する創作ネタの煮詰まりが若干感じられる面もございます。
質は非常に高いものではございますが..............................中期を代表する作品ではございますが、バンドの「峠」を象徴する感がございます......
前作の成功により相当期待が高まっていた事もあり、リリース後はチャートアクションは好調となります。
ツアーも好評となりますが
今作の音響を含めた洗練度や音造りの有り方が違和感を齎した感があり、セールス的には以前より下回る事となります..............
また作曲クレジット等の貢献に対する不満がバンド内に露呈してきており、バンドの活動に徐々に暗い影を投げ掛けていく事となります.............
正直The Bandはカナダ出身の4名とテキサス州出身のLevon Helmのバンド。
「想像された米国ルーツ音楽のロック化」という感のあるバンドでございます。
アメリカルーツ音楽系ロック(The Bandの四名はカナダ出身でございますが...........................)興隆一時代のみならず、
当時のアメリカならではの音楽性の感がある”サザン・ロック”ムーヴメントの勃興・興隆・終焉をも象徴する感がございます。
ボーナス楽曲は4曲。
別テイクに別ミックス等々となりますが、本編との音響違いや部分違い等が興味深いもの。
地に着いた音楽性と音造りで虚構を排した所は後々も同じでございますが、音響含め作品色を強めた感のある制作が窺えるものでございます.................
さて、長年論争が繰り広げられるミキシング問題でございますが..............................
以前かの”Audio Fidelity”社での今作リマスターCDを制作した名エンジニア”Steve Hoffman”曰くは「Todd Rundgren ミックスのマスターテープを借り出し使用した筈」との事。
(誰も”Todd Rundgren Mix”を聴いた事がないという事がネックではございますが..........)
また初CD化や日本独自紙ジャケット仕様盤リマスターの際には、楽器の定位位置が逆転しているものが聴かれるというもの。
音響的に整っている及び加工品的な音質はTodd Rundgren、生々しさがある音質でゴツゴツした楽器音の輪郭のあるものがGlyn Jonesという感がございますが、
一説にはTodd Rundgren Mix/Glyn Jones Mixの他に、更にはそれぞれの制作テープを交換して制作された再ミキシング・テープが存在という話も.................................
バンドによる選択後に再度Todd Rundgrenがミキシングし直したものも本編には使用されているという事実も存在。
制作当事者”Todd Rundgren
”曰くは「さっぱりわかりません」との事でございます..................................................
何かねぇ................................
この機会に是非。
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